学習費用に目が行きがちですが、中小企業診断士として登録するまでには勉強・受験・登録と、それぞれに費用がかかります。
費用総額が分からないと、なかなか勉強しようという決断ができないですよね。
本記事では、中小企業診断士の登録までにかかる費用についてまとめています。
本記事の内容
・中小企業診断士として登録するまでの費用を解説
・勉強代が費用総額を左右する。タイプ別の勉強費用比較
・登録した後の維持費も含めて解説
図にするとこんな感じです。
この記事を書いている僕はこんな人です。
勉強を始める前に費用の全体感を知って、コスパの良し悪しを見極めましょう!
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Contents
費用総額と内訳
結論から言うと、勉強を開始してから登録までは25~50万円の費用がかかります。
内訳は、まず勉強にかかる費用と、試験を受ける費用、合格後の登録費用があります。
ざっくりとこれらの相場観を記載すると以下の通りです。
<費用の相場観>
費用 | 通学 | オンライン | 独学 |
勉強の費用 | 30万円 | 10万円 | 5万円 |
試験の費用 | 3万円 | 3万円 | 3万円 |
登録の費用 | 18万円 | 18万円 | 18万円 |
合計 | 51万円 | 31万円 | 26万円 |
気になる方のために、前提条件を下記します(気にならなければ飛ばしてください)
前提条件
・一年間でかかる費用とする
・受験による登録とする(養成課程ルートは対象外)
・予備校では一次二次対策コースを受講する(二次のみのコースは今回は対象外)
・独学は参考書代+模試代とする
・試験にかかる交通費や宿泊費は除く
・実務補習を受けるものとする(実務従事ではなく)
・登録後は協会に所属する(本来は任意)
詳しく見ていきましょう。
勉強にかかる費用
勉強にかかる費用は、ざっくり5-30万円です。内訳は予備校代、模試代、参考書代です。また、予備校も通学タイプなのかオンラインタイプなのかによって費用は大きく異なります。
ざっくりと表にすると以下のイメージです。
通学
|
オンライン
|
独学
|
|
予備校
|
20-30万円
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5-10万円
|
0円
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模試
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0円
|
0.8万円
|
1.5万円
|
参考書
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0.5万円
|
0.5万円
|
3-4万円
|
合計
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約30万円
|
約10万円
|
約5万円
|
予備校代
中小企業診断士の登録までの費用は勉強代に左右されると言っても過言ではありません。どの勉強方法を選ぶかで総額が大きく変わります。
例えば1年間で通学タイプなら30万円、オンラインタイプなら10万円程度がかかります。
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模試代
模試代に約1.5万円がかかります。予備校の場合、学費に含まれるケースが多いですが、公開模試には外部生も申し込みができます。
相場観は一次試験が5,000円、二次試験が8,000円です。二次試験の方が高いのは、添削などで手間がかかるためですね。
参考書代
独学の場合、予備校に通わない分参考書を揃える必要があります。これに3~4万円程を要します。
詳細は別の記事に譲りますが、人気なのは一次試験は「スピードテキスト(TAC)」、二次試験は「ふぞろいな合格答案」です。
「スピードテキスト」は一般の書店でも購入できますし、TACのサイトでまとめ買いすれば15%安く購入できますので、「独学するぞ!」と決めている人はまとめ買いをオススメします。
「ふぞろいな合格答案」については全員にオススメです。二次試験は筆記のため採点基準が感覚的に掴みづらいのですが、「ふぞろい」には二次試験を受験した合格者/不合格者の答案が載っており、合否を分けるポイントを掴むことができます。
受験にかかる費用
試験を受けるために一次二次合わせて約3万円かかります。
一次試験
一次試験の受験料は13,000円です。
一次試験には「科目免除制度」があります。例えば弁護士であれば経営法務は免除、といった形ですが、科目免除申請の有無に関わらず同額となります。
二次試験
二次試験の受験料は17,000円です。
二次試験は科目免除や科目合格の制度がないため、全科目を同時に受験する必要があります。
その他
その他の費用で大きなものとしては、受験会場までの交通費です。
受験可能な地区は以下の通りです。
受験地区
札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡、那覇 ※那覇は一次試験のみ
また、試験の開始時間は一次/二次共に9時台であることを考えると、前日入りする必要がある人もいるでしょう。とりわけ、一次試験は例年7月の土日2日間にわたって開催されるため、前日・初日と2泊する必要があり、その分の費用がかかります。
登録にかかる費用
一般的に、合格後登録までには約18万円がかかります。
受験生は二次試験に合格した後、実務補習を経て協会に登録します。(※)
内訳は実務補習の費用約15万円と協会への入会金3万円です。
※登録にあたっては実務従事や養成課程のルートもありますが、ここでは一般的な実務補習について説明します
実務補習
合格者は3年以内に実務補習を15日間分こなす必要があり、費用は約15万円かかります。
実務補習とは
コンサルティング経験のない人のために設けられている実地の研修です。指導員の下に5名前後の合格者が入り、企業に対して診断活動・資料作成・報告を行います。
また、クライアントや協会に提出するレポートの印刷や製本にも費用がかかります。僕の場合はキンコーズに持ち込んで製本してもらったため、2,000円ほどかかりました。
(参考)入会金
中小企業診断士協会への入会金として、約3万円がかかります(都道府県により異なります)。
協会への入会は任意です。人脈や情報のために入会する人が多いため、説明します。
中小企業診断士協会に入会するためには、いずれかの都道県協会に入会する必要があり、入会金が必要となります。
入会金は各都道府県協会によって異なりますが、例えば東京・大阪・名古屋では一律3万円となっています。
ここまでの内容をまとめます。
ここまでのまとめ
・中小企業診断士の登録までには、勉強・受験・登録のステップがあり、合計25-50万円ほどがかかる。
・勉強にかかる費用は、5-30万円程度。勉強方法や、何年勉強するかによっても変わる。
・受験にかかる費用は、約3万円。ここに会場までの交通費や宿泊費がかかる。
・登録にかかる費用は、約18万円。実務補習を経て登録したのち、協会に入会するという前提。
登録までの費用を最も左右するのが勉強の方法です。次項ではタイプ別の勉強費用について解説します。
タイプ別勉強費用
勉強の方法は大きく分けて「通学」「オンライン」「独学」の3つに分かれ、費用や特徴が異なります。
一言で言えば、通学タイプは「丁寧だが、その分時間とお金がかかる」、オンラインは「いつでもどこでも受けられるが、二次を中心にフォロー体制が物足りない」、独学は「最も安く、自由が利く」などの特徴があります。
タイプ別勉強法のメリットデメリットは別の記事を書いていますので、併せてご参照ください。
通学
通学は時間や費用がかかる分、フォロー体制含め丁寧であることが特徴です。
費用の目安
費用は一次・二次試験の対策を含め、20~30万円が相場観となります。
予備校3社の費用比較
大手予備校3社の費用を比較すると以下の通りです。
TAC | LEC | 大原 | |
コース名 | 一次二次ストレート本科生※1年合格 | 一次二次合格プレミアム1年合格コース | 一次二次合格コース※1年合格 |
費用 | 286,000円 | 275,000円 | 298,000円 |
割引制度 | 再受講、他資格保有者、他 | 再受講、本試験経験者、他 | 再受講、本試験経験者、他 |
立地 | 主要都市10都府県 | 東京 千葉 名古屋 大阪 | 東京 名古屋 静岡 |
web対応 | あり | あり | あり |
最も安いのはLECです。他の予備校も含め、比較記事を作成中ですので、お楽しみに!
オンライン
オンラインは二次試験フォローが薄い傾向がある分、時間や場所の融通がきくのが特徴です。
費用の目安
費用は一次・二次試験の対策を含め、5~10万円が相場です。
予備校3社の費用比較
STUDYing | 診断士ゼミナール | アガルート | |
コース名 | 1次2次合格コース スタンダードコース | 1次2次試験プレミアムフルコース | 総合講義/総合カリキュラム |
費用 | 69,190円 | 54,780円 | 98,000円 |
割引制度 | 教育訓練給付制度対象、再受講、他 | 3年受講延長無料、不合格返金、他 | 合格で全額返金、本試験経験者、他 |
動画ダウンロード | 可能 | 可能 | 可能(音声のみ) |
倍速再生 | 可能 | 可能 | 可能 |
最も安いのは診断士ゼミナールです。他の予備校も含め、比較記事を作成中ですので、お楽しみに!
独学
独学は地頭や強い意思が求められる分、費用は安く融通もききやすいのが特徴です。
費用の目安
独学にかかる勉強費用は5万円程度です。参考書をそろえるのに3~4万円、模試を受けるのに1-2万円程度です。
なお、実際にはメルカリなどの中古で手に入れればもっと安く手に入れることもできます。
このように、メルカリなどでまとまって売っていることもあるので、安く入手したい人はこまめに確認してみましょう。
オススメ参考書
オススメな参考書としては以下の通りです。「過去問完全マスター」と「ふぞろいな合格答案」については予備校に通う人でも役に立つでしょう。
オススメ参考書
・TAC スピードテキスト:試験範囲が網羅されており、図解も豊富。
・TBC 速習テキスト:解説動画が無料。但し、アップロードが遅い、という口コミもある。
・過去問完全マスター:10年分の過去問が論点別に整理され勉強しやすい。
・ふぞろいな合格答案:二次試験用。不合格者も含めた生の答案が集められており、合否を分けるポイントが掴める。
維持にかかる費用
ここまでは勉強~登録するまでの費用を解説しました。ここからはご参考まで、登録後にかかる費用を解説します。
登録後も資格維持に費用がかかります。年間にならすと10万円弱です。
内訳は各都道府県協会の年会費が約5万円(所属は任意)と、資格の更新要件にかかる費用が約5万円です(実務従事ポイント・理論更新研修)。
東京 | 大阪 | 愛知 | |
年会費 | 50,000円 | 45,000円 | 49,000円 |
実務従事(回) | 36,000円~ | 37,400円~ | 38,880円~ |
理論更新 研修(回) |
6,300円 | 6,300円 | 6,300円 |
合計 | 92,300円~ | 88,700円~ | 94,180円~ |
実務従事は各協会に所属していないと高くなります(例えば、東京の場合は非会員は54,000円)。また、大阪府協会は参加回数に応じて徐々に安くなります。初回は44,000円から始まり、5回目以降で37,400円となります。
理論更新研修は各都道府県で料金は一律です。また、協会以外にも、あきない総研や大塚商会が主催する研修もあります。
前提条件
・各都道府県協会への所属は任意ですが、所属するものとします。
・更新要件の一つである実務ポイントは、実務従事に参加することで取得するものとします。※安く済ませる他の方法もあります
・更新要件の一つである理論更新研修は、協会主催のものに参加するものとします。
協会の年会費(年間※所属は任意)
協会に所属するためには毎年5万円前後の費用がかかります(都道府県協会により異なります)。
例えば東京・大阪・名古屋の年会費はそれぞれ以下の通りです。
都道府県協会
|
年会費
|
東京
|
50,000円
|
大阪
|
45,000円
|
愛知
|
49,000円
|
尚、所属は任意なので必要ないと思う人は脱会することも可能です。
更新要件にかかる費用(5年間)
資格には有効期限があり、更新のために5年間で20万円強(年間平均4万円強)がかかります。
内訳は、①理論更新研修5日分約3万円と、②実務ポイント30ポイントを取得するための実務従事費用18万円です(※)
※協会主催の実務従事に応募するものとします。自分で診断先を探せば無料です。
理論更新研修
理論更新研修を受講するために、5年間で約3万円がかかります。
理論更新研修は協会が主催する勉強会で、中小企業支援のために更新しておくべき情報を学びます。
講義は4時間かけて2部構成で行われ、一回当たり6,300円かかります。5年間で5回受ける必要があるため、6,300円×5回=31,500円となります。
具体的な講義内容は例えば以下の形です。
12:50~13:50 新しい中小企業政策について
14:00~15:30 中小企業の新事業展開支援~日本酒から考える酒蔵・酒販店の経営戦略~
15:40~17:10 中小企業の新事業展開支援~わが社の経営戦略~
これは中小企業診断士協会より引用した北海道協会の研修ですが、面白そうなテーマですね。
尚、あきない総研や大塚商会など、協会以外が主催する理論更新研修もあります。
実務ポイント
実務ポイントを実務従事で取得しようとする場合、5年間で18万円がかかります。
実務従事ポイントとは
実際に中小企業に診断を行うことで得られるポイント。期限内に30ポイント(30日間)を取得する必要がある。
実務補習と同様、指導員の下に5~6名の診断士がチームとなり診断を行う。
実務従事に参加するための費用は36,000円です。一回の実務従事が6日間なので、36,000円/6日間×5回=180,000円がかかります。
でも、結構高いですよね。実は安く済ませる方法もあります。
安く済ませる方法
・独立診断士と仲良くなってボランティアで仕事を手伝う
・部会や研究会に所属して、案件を紹介してもらう
・知り合いの経営者に頼んで診断させてもらう
他士業との比較
こう考えると、維持費用でも年間10万円が発生するのはけっこう高く感じがちですよね。
ただ、他の国家資格に比べると実は同じくらいです。
例えば、以下の通りです。
資格名
|
年間維持費
|
弁護士
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50-100万円
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公認会計士
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10万円
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税理士
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10-15万円
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司法書士
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20-25万円
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中小企業診断士
|
10万円
|
尚、協会を退会したり、実務従事以外でポイントをとれば、維持費は理論更新研修の6,300円/年程度まで削減することも可能です(5年で5回の理論更新研修=31,500円)
(参考)プロコン塾・研究会
名ばかり診断士とならないためには、登録後も自分の市場価値を高める努力をし続けるべきです。あくまで登録はスタートでありゴールではありません。
自己研鑽のために有効な手段の一つがプロコン塾や研究会に所属することです。
プロコン塾とは、都道府県協会など独自で設けている、主に独立に向けたスキルアップの研修です。定員は20名前後にて半年~1年の期間にわたって行われ、費用は数万円~20万円程度がかかります。
研究会とは、各都道府県協会が運営する勉強会です。東京協会では60以上の研究会があります。テーマは多岐にわたり、事業再生、事業承継、IT、営業、終活、など様々な分野の研究会があります。
費用は研究会によって全く異なります。無料のところから年会費がかかるところまで様々です。内容も会員による勉強会だったり、外部講師を招いたり、実際に診断活動などを行ったりと、研究会による特色がありますので、自分に合った研究会を見つけましょう。
まとめ
ここまでの内容をまとめます。
本記事のまとめ
・中小企業診断士は登録までに25-50万円がかかる
・特に勉強代により総額が左右される。通学が最も高く、独学が最も安い
・登録後も年会費・更新費用などで年間約10万円がかかる
中小企業診断士を勉強を始めてから登録するまでに約20-50万円がかかります。また、登録してからも維持費として年間約10万円がかかり、一見高く感じるかもしれません。ただ、他の士業と比べてみると同水準か、むしろ割安です。
資格を持っているだけでは宝の持ち腐れです。中小企業診断士はキャリアを拓く「マジックライセンス」とも呼ばれますが、活かすかどうかは自分次第です。
登録で終わらず、中小企業診断士として積極的に活動して、市場価値を高めていきましょう。